2026年2月10日
しずおか文化談話室

【浜松市秋野不矩美術館の特別展「京都の日本画 京都画壇の俊英たち」】野路毅彦アナウンサー、京都市在住の父に画家麻田辨自との縁を教わる

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は浜松市秋野不矩美術館の特別展「京都の日本画 京都画壇の俊英たち」を題材に。
(文・写真/アナウンスマイスター・野路毅彦)

立春に日本画ファンの父と、浜松市天竜区の秋野不矩美術館を訪ねた。快晴の下、美術館へ上る坂の白梅が満開だった。私の実家は京都市で、84歳の父が今もそこに暮らす。

展示作品に、麻田辨自(あさだ・べんじ 1900~84年)の名があり、父の目に留まる。「ここの家で、ばあさんが子守やら手伝いしてたんやで」と言う。ばあさんというのは、父の母親。私にとっては一緒に暮らした祖母である。祖母が若いころ、アトリエで家事をしていた話は聞いたことがあったが、その画家の名を私は初めて知った。

辨自の作品「樹園」は、梅雨の晴れ間のあじさいが主役だ。ただ手前には日陰を好みそうな常緑樹が暗く褐色で描かれ、強い湿り気を感じる。 「辨自さんの絵には、なかなかお目にかかれへん。こんなところで出会えるとは」と、父は感激している。北遠まで連れ出した甲斐があった。

山本知克(やまもと・ともかつ 1927~2003年)の「家」は、戦後間もない雑然とした家並みを描いている。京都・松原と説明書きにあるが、松原は東西に長い通りの名だから、京都人にとっては不十分な案内である。

松原通りのどこだと思うか? 父に尋ねると、今はもうない専売公社のビルが右奥に建っているのを手掛かりにして、「松原壬生川の交差点あたりから、東向いて描いてる」と絞り込んだ。「専売より西の松原通りは、こないに、せばせばかった(狭かった)」と振り返る。なんでも、もう少し西に高校を出てすぐ勤務した工場があったから分かるとのことで、信憑性はある。

私にも、お気に入りが一つできた。宇田荻邨(うだ・てきそん 1896~1980年)の「野々宮」だ。遠目に見ると、黄土色の画面に、使い古しの刷毛(はけ)で掃いたような緑の筋と、赤い点があるだけだ。ところが近づいていくと、竹の緻密な細い線描が手前に見えてくる。緑の筋は竹林の隙間から見える神社の森であり、赤い点は朱塗りの柵だったのだ。

ソフトフォーカスの映像に次第にピントが合ってくる感覚だった。絵から3メートル離れて50センチまで近づく、を繰り返した。景色は動画のように変化する。もっとも、はたから見れば、しきりにあやしく動いているのは私の方であった。

<DATA>
■浜松市秋野不矩美術館  特別展「京都の日本画 京都画壇の俊英たち」
住所:浜松市天竜区二俣町二俣130
開館:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(ただし、2月23日祝日開館。翌24日火曜日休館)
観覧料:一般1000円、大学生・専門学校生・高校生500円、中学生以下無料
会期:3月8日(日)まで

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

おでかけ
エンタメ
浜松市

あなたにおすすめの記事

  • 京都市立芸術大ゆかりの日本画家の作品37点 秋野不矩美術館で特別展 3月8日まで=浜松市

    京都市立芸術大ゆかりの日本画家の作品37点 秋野不矩美術館で特別展 3月8日まで=浜松市

    SBSテレビ LIVEしずおか

    #浜松市
  • 【浜松市秋野不矩美術館の「日本画☆動物園」展】 ゾウとダチョウの対比、同じ視界で楽しめる

    【浜松市秋野不矩美術館の「日本画☆動物園」展】 ゾウとダチョウの対比、同じ視界で楽しめる

    しずおか文化談話室

    #エンタメ
    #おでかけ
    #浜松市
  • 【浜松市秋野不矩美術館の特別展「京都大原に生きた画仙人 小松均展-自然をまなざす」】2025年の静岡県は日本画大家の個展が大豊作。石崎光瑤、小野竹喬と小松均を「見比べ」

    【浜松市秋野不矩美術館の特別展「京都大原に生きた画仙人 小松均展-自然をまなざす」】2025年の静岡県は日本画大家の個展が大豊作。石崎光瑤、小野竹喬と小松均を「見比べ」

    しずおか文化談話室

    #浜松市
    #浜松市天竜区
  • 【浜松市秋野不矩美術館の「加山又造と継承者たち―新たな地平を求めて―」展】
白い空間、神々しく

    【浜松市秋野不矩美術館の「加山又造と継承者たち―新たな地平を求めて―」展】
白い空間、神々しく

    静岡新聞教育文化部

    #県内アートさんぽ
    #エンタメ
    #おでかけ
    #浜松市
  • 【浜松市秋野不矩美術館の特別展「秋野不矩と高畑郁子 -インドとの邂逅-」 】 白の空間に高畑郁子の赤と秋野不矩の黄が映える

    【浜松市秋野不矩美術館の特別展「秋野不矩と高畑郁子 -インドとの邂逅-」 】 白の空間に高畑郁子の赤と秋野不矩の黄が映える

    しずおか文化談話室

    #おでかけ.エンタメ
    #浜松市
  • 【浜松市秋野不矩美術館の所蔵品展「創造の眼Ⅳ~ 天眼~」 】「姉妹」の女性二人が表す「伝統」と「革新」

    【浜松市秋野不矩美術館の所蔵品展「創造の眼Ⅳ~ 天眼~」 】「姉妹」の女性二人が表す「伝統」と「革新」

    しずおか文化談話室

    #おでかけ
    #エンタメ
    #浜松市
    #浜松市天竜区
  • 【浜松市秋野不矩美術館の所蔵品展「≪有為転変≫ 変化してやまぬ創造の源Ⅳ ~ 理 ~」 】 美術館設立に合わせて創作した「オリッサの寺院」。御年90歳で描いた横7メートルの作品

    【浜松市秋野不矩美術館の所蔵品展「≪有為転変≫ 変化してやまぬ創造の源Ⅳ ~ 理 ~」 】 美術館設立に合わせて創作した「オリッサの寺院」。御年90歳で描いた横7メートルの作品

    しずおか文化談話室

    #おでかけ
    #エンタメ
    #浜松市
  • 【浜松市秋野不矩美術館の「内田あぐり 氾 Fluxes」展】天竜区内を取材した新作

    【浜松市秋野不矩美術館の「内田あぐり 氾 Fluxes」展】天竜区内を取材した新作

    静岡新聞教育文化部

    #県内アートさんぽ
    #エンタメ
    #おでかけ
    #浜松市
  • 【静岡県立美術館の企画展「生誕140年記念 石崎光瑤」】 鳥たちの顔つきがいい。秋野不矩とはニアミスなのか?

    【静岡県立美術館の企画展「生誕140年記念 石崎光瑤」】 鳥たちの顔つきがいい。秋野不矩とはニアミスなのか?

    しずおか文化談話室

    #おでかけ
    #エンタメ
    #浜松市
    #静岡市
  • 【「秋野不矩・金子富之が描く アジアの神々」】アジアの宗教描く、時空を超えた二人展

    【「秋野不矩・金子富之が描く アジアの神々」】アジアの宗教描く、時空を超えた二人展

    静岡新聞教育文化部

    #エンタメ
    #県内アートさんぽ
    #浜松市
    #浜松市天竜区