2024年8月11日
論説委員しずおか文化談話室

​【実石沙枝子さんトークイベント】読書は体育座りで

静岡新聞論説委員がお届けする「しずおか文化談話室」。今回は7月27日に静岡市葵区のひばりブックスで開かれた、静岡市出身の作家・実石沙枝子さんのトークイベントの模様をお届けする。長編2作目「物語を継ぐ者は」(祥伝社)の発刊記念企画。実石さんの読書ライフをテーマとした。(聞き手=論説委員・橋爪充、人物写真はトークとは別の日に写真部・坂本豊が撮影)

椅子に座ると読みにくい

-どんな場所、どんな態勢で本を読んでいますか?
(実石)自宅リビングのソファの、クッションの間に体を埋めて、体育座りをして読みます。小学生時代に図書室に入り浸っていた頃の影響だと思います。文庫本の棚があって、その角に背骨をぐりぐりしながら体育座りして読む、というのが私のスタイルでした。

寝そべったり、椅子に座ったりだと読みにくいんです。電車や新幹線だと体育座りができないので、本の内容が頭に入ってこない。読むペースががた落ちしますね。最近は自室のオフィスチェアの上でも体育座りしています。膝を抱えて。

-食事をしながらの読書はあり、なしのどちらですか?
(実石)絶対にアウトです。私は「本という物体」が好きなんです。車とか、お花とか、ギターとか、皆さん好きな形があると思うんですが、わたしは「紙の本」という物体がたまらなく好きなんです。だから、食事しながらは御法度です。

家族に本を貸すときも絶対に食べながら読まないでといいます。「かにぱん」のようなものならギリギリセーフ。ぽろぽろしたものが手に付きませんから。ポテトチップスのような、手に油が付くものは絶対にダメです。ラスク、焼き菓子もダメです。

百万年書房「暮らし」にどハマり

-お風呂での読書はいかがですか?
(実石)ハードカバーはダメ、四六判もダメ。文庫本はギリギリセーフです。換気扇をガンガン回して、お風呂のふたにタオルを敷いて、(本が)落ちないように細心の注意をはらって。手が汗ばんだら、敷いたタオルですぐに拭きます。

一電子書籍には親しんでいますか?
(実石)一時期、巻数が多い漫画を電子でそろえていました。小説投稿サイトに投稿していたころは、必要だと思って電子を読みあさってもいた。でもやっぱり私は紙の本フェチなんです。電子だと読まなくなっちゃうんですよね。紙の本をめくりたい。

-書店ではどうやって本を選んでいますか?
(実石)装丁で買ってしまうことがありますが、装丁がいい本はだいたい高い。「この本の価格で気になっていた文庫本が2冊買える」と思ってわれに返ることも多いです。SNSのタイムラインで話題になっている作品、作家さんは買っていますね。最近は百万年書房の「暮らし」というエッセーのレーベルにどハマりしています。

実石沙枝子さんが「影響を受けた」5冊
■小学生時代 はやみねかおる「ぼくと未来屋の夏」(講談社青い鳥文庫)
■中学生時代 桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」(創元推理文庫)
■高校生時代 三浦しをん「風が強く吹いている」 (新潮文庫)
■20代 岩井圭也「永遠についての証明」(角川文庫)
■20代 米澤穂信「さよなら妖精」(創元推理文庫) 


 

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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