2025年12月3日
しずおか文化談話室

​【泥ノ田犬彦さん作「君と宇宙を歩くために」第5巻 】「一人でいたって良い」宇野の成長曲線、急カーブで上昇

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は10月23日初版発行(奥付記載)の、泥ノ田犬彦さん(静岡県出身)作「君と宇宙を歩くために」第5巻(講談社)。漫画誌「アフタヌーン」と、「アフタヌーン」が運営するウェブ漫画サイト「&Sofa」で連載。
「底辺高校のヤンキー」小林と、物事の同時処理が苦手で日常の行動をメモ化している転校生宇野がなぜか意気投合し親友に。天文部に入り、先輩や顧問の先生とのやりとりを通じて、二人そろって苦手な「適切なコミュニケーション」を手探りで見つけていく。

第5巻は文化祭の準備期間が描かれる。クラスで模擬縁日を実施することになり、別々の班で準備を進める小林と宇野。天文部の部員たちとはある程度スムーズにやりとりができるようになった宇野だが、くじ引きで決められた班のメンバーたちとの関係はスムーズにはいかない。

「行動メモ」は「皆のノリがわからない時」は「①笑顔でいる②沢山しゃべらない。静かにしている」などと書かれている。宇野は、成功体験を基にした「行動メモ」に従って、小道具づくりなどに取り組むが、どうしても周囲と浮いてしまう。

宇野にとっては作業するときは作業に集中し、雑談するときは雑談し、という切り分けが必要なのだ。
やがて班の仲間から「浮いてんの そっちだからね」と言い渡されてしまう。

理解できない「ノリ」がある。グループに入っていけない。そんな時、人はどうするか。人間が生きている限り、永遠につきまとう命題だ。

これに対し、本作ではとある人物がこう言う。「そういう時さ 一人でいたって良いと思うよ」

同調圧力よりは弱いかもしれないが、集団とのちょっとした感覚のズレはもやもやを呼ぶ。もやもやは積み重なって重荷になる。だったら集団から少し距離を置いてみればいい。

宇野は「できること」と「できないこと」がはっきりしている。人より「できること」が少ないかもしれない。ただ「できること」を最大化するための知恵はある。第5巻でも、他者のアドバイスを受け入れて乗り切った。

過去4巻と比べ、宇野の成長曲線が急カーブで上昇する様子を描いた第5巻である。

(は)

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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