2025年12月7日

【映画「狂い咲きサンダーロード」の石井岳龍監督の舞台あいさつ】「この映画は自分のばかさ加減も含め、100%全部入れているんです」

「箱男」(2024年)、「パンク侍、斬られて候」(2018年)、「ユメノ銀河」(1997年)、「爆裂都市 BURST CITY」(1982年)などで知られる石井岳龍監督が、日本大芸術学部在籍時に卒業制作として1980年に発表した「狂い咲きサンダーロード」が、今夏から各地で公開45周年記念で特別上映されている。近未来の都市と廃墟を舞台にして暴走族や民族団体のメンバーが繰り広げるバイオレンス映画。泉谷しげる、森山達也とTHE MODS、PANTA&HALによる楽曲が全編に切れ目なく使用され、得も言われぬ躍動感をもたらす。
12月5日から上映が始まったシネマイーラは、館の設立17年を記念したトークイベントとして石井監督を招いた。石井監督本人の弁によると、静岡県でイベントに参加するのは約20年ぶりという。
「狂い咲きサンダーロード」の上映終了後、舞台に登場した石井監督の言葉をお届けする。聞き手は同館の榎本雅之館主。

今回の45 周年記念上映は 夏に始まったんですが、冬まで続いている。ちょっと信じられない状態です。もともと映画館で見ていただきたいと思って作ったものなので、こうやって皆さん見に来てくださって本当にありがとうございます。
(映画にも雪の場面があります。撮影時期は冬ですね)
本当は夏に撮りたい。でも「爆裂都市」もそうなんですけど、準備が遅れたりしてなかなかうまくいかない。結局、いつもこれぐらいの時期になるという状態でしたね。
(200 万円で作ったというのは都市伝説でしょうか。役者がノーギャラだったというのは)
(製作費の総額は)秘密です。ただ、役者、スタッフは、作っているときは全員ノーギャラでした。たくさん借金したのですが、(映画がヒットしたおかげで)それを全部返した後に余ったお金を全員で均等に分けました。
(ロケ地は九州が中心なんですか?)
川崎、あと新小岩の工場ですね。公害問題で立ち入り禁止になった工場に忍び込んで。福岡の街中でも撮りました。(出身地なので)土地勘があるんです。地元の族(暴走族)の人たちとか仲間に手伝ってもらったり。炭鉱跡も使いました。当時はまだ東京にも福岡にも「廃墟」というか、私が好きなデッドテックな世界が残っていたので、そういうところに行くとほっとしたんですよね。東京の街中にいると、息が詰まるような、呼吸ができないような感じになっていたので。
映画「狂い咲きサンダーロード」の一場面
(ラストシーンはセットのように見えましたが)
あれは東映の撮影所ですね。(別の映画の)オープンセットが「廃墟」になってたんですよ。それが素晴らしかったので。ここでぜひ撮影したいと。「何をやってもいい」と言われました。
(手持ちカメラで走ってストップモーション。そんな場面を見たら、深作欣二監督の「仁義なき戦い」を思い出しました)
当時(1970年代)の深作さんは「人斬り与太」シリーズ、「仁義なき戦い」シリーズ、「ドーベルマン刑事」など、年間5本ぐらい撮っているんです。私は貧しかったので、この金を使ったら1週間ぐらい食事もできないという状態だったけれど、どうしても見たくて。その方が自分が満たされたわけです。それから、当時私が住んでいた練馬は、近辺にいくつか映画館があったんですが、最終回が始まったらもぎりがいなくなるんですよ。その時に忍び込んで見たこともある。
(深作監督は日本大芸術学部ということで、石井さんと一緒ですよね)
はい。「狂い咲きサンダーロード」を褒めてくれたんです。いろいろ知りたいことがあって、ご本人に聞いたんですけど「お前はライバルだから教えない」と。ちょっとうれしかった。立派な方、尊敬できる人物でしたね。
(日本大を卒業した後、メジャー(の映画会社)に行く気持ちはなかったんですか)
(卒業の)2年前に日活の「高校大パニック」を共同監督という形でやらせてもらって。その経験もあって、(メジャーは)ちょっと違うと思ってしまったんです。自分たちで理想の映画を作りたいと言う思いがあった。「サンダーロード」は16ミリですが、この後はこういう形で自由に作れないとも思っていました。撤退する気はありませんでしたが、その後はお金を稼がなくてはと。ところがこれが運良くヒットして、次の「爆裂」ににつながった。
映画「狂い咲きサンダーロード」の一場面
(そんな「サンダーロード」に影響を受けた人がいっぱいいます)
本当にありがたい。この映画は自分のばかさ加減も含め、100%全部入れているんです。これはなかなかやろうと思ってできることではない。今後も、やっぱり激しい映画を撮りたいですね。
静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。
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