2026年6月6日

【静岡東宝会館での木村太一監督『FUJIKO』初日舞台あいさつ】映画の舞台となった静岡で初日あいさつ。木村監督の願いが実現
(文と写真=高度専門記者兼論説委員・橋爪充)

英国と日本を拠点とし、映画『AFTERGLOWS』やKing GnuのMVなどで知られる木村太一監督が、静岡市出身の自身の母親の人生をベースに作った『FUJIKO』。木村監督の強い希望で、多くのシーンを撮影した静岡市での初日舞台あいさつが実現した。木村監督のほか、主人公・富士子に抜擢された片山友希さん、プロデューサーで出演も果たしたMEGUMIさんが上映前に登壇した。
物語の起点は1977年の静岡市。シングルマザーの富士子が社会や家族の無理解に直面しながらも、自分らしく生きていこうと奮闘する。今から約半世紀前の地方都市は「男は仕事、女は家庭に入る」という考え方が支配的で、そこからはみ出した富士子はあらゆる局面で「常識」との対峙を強いられる。
ただ、片山さんの演技は、戦闘モード一辺倒ではなく、したたかさや軽やかさも感じさせる。一人で子育てすると決めた富士子のまなじりを決するかのような「覚悟」、その一方でどうしようもなくだだ漏れる娘への愛情が、双方入り交じって伝ってくる。

特筆すべきは音楽とのシンクロで、ギターバンドサウンドを中心とした楽曲とのかみ合わせがとてもスタイリッシュである。賭場の場面が秀逸。もやしをつかみ、フライパンに投げ入れ、他の具材と強火で炒める、といった映像が細かいカット割りで表現されていて、キレのある音楽と見事に同期している。個人的には『ベイビー・ドライバー』を想起したが、パンフレットの監督の発言によると、『リトル・ダンサー』のT・レックスの楽曲が流れる場面へのオマージュとのことだ。

舞台あいさつの3人の言葉をお届けする。
木村監督
「平日なのにたくさんの方に来ていただき、ありがとうございます。公開初日は静岡で迎えたかったので、とても光栄です。僕の母親は静岡生まれで、僕自身も小さい頃から静岡によく来ていました。その頃から聞いていた母親の話が、この映画(のベース)なんです。富士子は、アメリカ映画の主人公のような大きな夢があるわけではなく、ちょっと模索しているキャラクターなんですね。それが僕にとっては面白い。目の前にあることをこつこつ頑張った先に自分のやりたいことが見つかる、自分に選択が与えられる。そこが魅力だと思っています」
MEGUMIさん
「静岡を舞台に作っているので、静岡の皆さんに一番最初に見ていただきたかった。プロデューサー業を始めたばかりの時、女性をエンパワーするような作品を作りたいと強く思っていたんです。そんな折に太一さんに居酒屋に呼び出されまして。自分のお母さんのお話を映画にしたいとのことでした。いろいろお話をうかがうと女性を応援する話になりそうだったので、断る理由もなく、参加を決めました」
片山さん
「静岡の方が見たら、(この場面は)どこどこだと分かるかもしれません。そういった意味でもすごく楽しい映画になっていると思います。富士子は人間らしい人。100%いい人、 100%いい時というのはなくて、たまにはすごく落ち込んだり、人にきつく当たってしまったり。自然体で生きているという点でとても人間らしい。魅力的なキャラクターだと思っています」
<DATA>※県内の上映館。6月5日時点
金星シネマ(伊東市、6月17日~)
シネプラザサントムーン(清水町)
イオンシネマ富士宮(富士宮市)
MOVIX清水(静岡市清水区)
静岡東宝会館(静岡市葵区)
藤枝シネ・プレーゴ(藤枝市)
TOHOシネマズ サンストリート浜北(浜松市浜名区)
TOHOシネマズ浜松(浜松市中央区)
静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。
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