2026年3月29日

【「ラウドヒル計画」のエイトビート公演『ROCK'N'ROLL STAR』】ロックンロールに憑かれた人々。「三つ子の魂」が輝くとき
(文・写真/論説委員・橋爪充)

拠点とする大規模改修中の静岡市民文化会館を離れ、2025年度はマリナートで活動を続ける同プロジェクト。エイトビートの『ROCK'N'ROLL STAR』は2024年3月以来、2年ぶりの再演となる。
「シズオカ」出身の伝説のパンクバンド「フジヤマデストロイ」の10年ぶり再結成を巡る、メンバーやプロデューサー、関係者のやりとりを描いた物語。Sex Pistols『God Save The Queen』を幕開けに、1970~90年代の英米ロックの名曲がマリナートの音響設備でド派手に鳴り響く。これはかなり得がたい体験だ。
フジヤマデストロイのメンバーが思うに任せぬ現況への心境を吐露する場面にはRadiohead『Creep』、ファイトシーンではThe Clash『I Fought The Law』。背景とリンクさせた的確な選曲が光る。公演が終わっているので書くが、ラストシーンではOasisの『Rock'N'Roll Star』ときた。演目のタイトルになってはいるが、まさか本当に直球ど真ん中を投げ込んでくるとは。リアム・ギャラガーの歌う「サンシヤーィン」がとてつもなくポジティブに聞こえた。
日本語曲としては、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『スモーキン・ビリー』や10-FEET『第ゼロ感』。「Sex Pistols、The Clash、The Damned、The Jamという英パンク四天王」といったせりふも出てくる。特筆すべきは、ある若いメンバーが最近よく聞いているバンドとしてBlack Midiを挙げている点だ。今年1月、創設メンバーのギタリストが26歳で急逝した同バンドは、2016年にボーカリストで作詞も手がけたメンバーを亡くした設定のフジヤマデストロイと見事に重なり合う。
「自分は自分なりの音を真っ向勝負で鳴らせ」「人に優しくあれ」「自由を縛り付ける存在にあらがえ」という「ロックンロールスピリッツ」を煎じ詰めて舞台化したような作品である。総監督・脚本の勝山康晴さん(藤枝市出身)の「三つ子の魂」とも言うべき考え方がダイレクトに伝わってくる。こんなにも真っ正直な表現に、久しぶりに出会った。
ここ1週間ほど、「ロックンロールに憑かれた人」の優れた仕事にいくつか接した。先週、藤枝市に正式オープンした滞在型レコーディングスタジオ「MUSIC inn Fujieda」はアジアン・カンフー・ジェネレーションの後藤正文さん(島田市出身)の「Do It Yourself」の精神に基づくプロジェクトの一つの到達点だろう。
正式オープンした「MUSIC inn Fujieda」(3月22日、藤枝市)
3月22日のスタジオ内覧会に行き、付属施設の中にオープンした書店「SO GOOD books&lifestyles」で一冊の本を手に入れた。映画監督で作家の安田潤司さんが書いた『パンクス 青の時代』(
DU BOOKS)。1980年代の日本のハードコアパンクシーンを、憑かれるようにして写真に収め、映像を撮った安田さんの自伝的エッセーである。GAUZE、G.I.S.M.、THE COMES、THE EXECUTEを中心に、THE STALIN、町田町蔵、ZELDA、じゃがたらといった面々との日々をつづる。
安田潤司さんの著書『パンクス 青の時代』
大げさではなく、時には命の危険を冒してでもライブを撮影する。そこには「金になるかどうか」という指標は見えない。「自分が面白いと思うかどうか」が全てである。ここにもはっきり、広義の「ロックンロールスピリット」がある。
ロックンロールに憑かれた人々の痛快なアウトプットに接した3月下旬。NEWEST MODELの楽曲の歌詞が頭をかすめる。自分のやるべきことをやらなくては。
いかさまはもういらん 顔出すなよ
もらい泣きするだけの君の涙
いかさまはもういらん 顔を出すなよ
おまえらはどないやねん!!!
(『青春の翳り』〈1989年〉)
<DATA>
■「ラウドヒル計画」エイトビートStage5.01 「ROCK'N'ROLL STAR」
会場:静岡市清水文化会館マリナート(静岡市清水区島崎町214)
開演日時:3月28日(土)午後1時、午後5時。3月29日(日)午後1時
静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。
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